（その１） タクシーの規制緩和問題について
日の本は神の国である
四方を海に囲まれた日本列島は、豊富な海産資源に恵まれると共に、大いなる海洋は外敵が安易に侵入できない天然の聖なる城壁とも成り、且つ又日本の津々浦々は直ちに広く世界全体に交易を求める貿易港なのである。地政学的に見ても人類最高の場所である。
国民は一心同体で相和し、日本社会は複雑な法規制で守られているので、外国商人が日本の市場に新規参入することは非常に困難である。しかし、日本社会はいまや世界一の給与水準となり、世界一豊かな市場を持つに至っている。特に金融市場は巨大化した。郵便局や銀行の預金総額は１０００兆円を越える。一般の商品市場を見ても、日本人の女や若者は単細胞で異常に熱心にブランド製品を買いたがり、男女を問わず日本人の食欲は限りなく貪欲にして、世界中の食品に対してあきれるほど無差別な雑食をするので、服飾市場も食品市場も巨大である。その原資は、資源もエネルギーも無いのに、平和憲法を盲信して、サラブレッド並みに訓練された優秀な日本株式会社の社員男女が身の危険を顧みず裸で（正規の日本軍の後ろ盾なく）世界中を相手に商売して稼ぎ続けて得ているのである。
軍事的後ろ盾がない為に、日本国民個人ないし企業単位では東南アジアの海域でしばしば海賊に襲われたり、南米や中東でゲリラの人質になったり、大規模な貿易詐欺に引っ掛ったり、アメリカ本土ではゆすりたかり紛いの訴訟でぶったくられたりしてはいるけれども、当面の自己保身とアメリカの傘下での一時的国益に目がくらみ、かつ武力の行使は自ら放棄している憲法上の制約をいいことに政府は決して外交問題として取り上げないで握りつぶしている。
これが戦後日本の姿であり、特に、アメリカに対しては昭和２０年以来絶対服従すること以外に生きていくすべが無いと信じている。当面は対外国に関しては被害にあった国民企業各自が泣き寝入りし、うまく稼げたら残さず納税させられる状態が続く仕組みである。
結果的に外貨準備高が諸外国を圧倒する額になってしまった。だから、外国商人達がこの半独立国に対してしつこく市場開放を要求していのだ。規制緩和をあおっているのはこの外国商人勢力である。
安易な規制緩和は自殺行為である
日本社会は複雑な規制を設けることで互いの利益を調整し、全体として護送船団方式と言われるような、或いは日本株式会社と言われるような単一民族の共同体として生きてきたのである。そうする以外に、この資源のない狭い島国で一億の国民が生きていくすべがないことはあきらかである。企業の終身雇用制度は国民生活に安心感を与えた。財閥による企業グループは企業城下町を形成し、都市独自の各種スポーツ芸能を育み、県単位での国体や学校単位の各種スポーツ大会とあいまって、一億一心の世界に誇り得る国民意識の美風を醸成する一助となった。
タクシーは事業規模からいうと日本経済に占める割合は小さい。しかし、実に木目細かく日本の全産業と連携して存在しているのである。私の所属している日個連だけでもチケットの得意先数は６０００社を超える。利用者の大半は企業活動上の移動の為にタクシーを利用している。遊びや買い物でタクシーを利用するのは少数である。
タクシー業界はもし放置しておけば、決して安全性や利便性を確保できなかったであろう。日本のタクシーが世界一安全でありえるのは、許認可事業であるからである。
タクシーは官主導の規制によって育てられたと言っても良いのである。今回、外圧に迎合する規制緩和のムードに踊らされることなく、道路運送法及びタクシー業務適正化臨時措置法が慎重に改正された、と信じたい。問題は、これまで官主導で育てた安全性と利便性を護り、運用に当たっても慎重な配慮をして、無闇な増車や運賃の価格破壊を阻止し、天下国家の利益を守る英断が下されることを望む。
今回の法律改正は省庁再編成に伴う旧法の改訂といった程度のものでしかない。この法律を適用してタクシー業界を一気に自由化してしまうという安易な自由化による経済活性化論や安易な自由競争者の参入は自滅するだけであろう。自由化に付和雷同する大衆を煽るべきではない。本来規制によって育ててきた業界の場合、自由化とは安全性利便性を下降させ、ひいては日本経済の足かせになることはあっても、国家国民の利益を増進することは、到底望めない。
第8条の緊急調整措置が最も肝要な部分である。この部分に国会審議でも多くの時間が割かれたが、結果的には規制緩和ムードという内外圧の雑音が大きいために不充分な法律になってしまったのは残念である。
現実に、東京のタクシーは供給過剰の状態にある。私は、直ちに台数を１０パーセント減らすべきだと考える。そのためには思いきった新法の制定か、もしくはこの緊急調整措置条項の内容の充実改正が必要である。
縄野自動車交通局長（２００１年当時）が財産権の侵害になると心配していた減車措置であるが、政府が事業者から希望者を募り、タクシー一台当たり１０００万円位で買い上げれば良いのだ。そして、一時的に休車させ、需要が増えたら１１００万円位で再度買い戻させるという弾力性も持たせるのである。現在、タクシー会社の経営状態は最悪で身売りする業者が多数あるのである。身売りした先で経営内容が改善されることはありえず、企業利益を確保しようとすれば一層労働条件が劣悪となり、ひいては公共の福祉を損なう結果を引き起こすしかない。規制緩和なんて言っている場合ではないのである。政府の積極的需給への介入が無ければ、日本と言う国は経済を活性化することができないのであり、特にタクシー事業は賢明な行政による指導と保護が是非とも必要である。
参考資料：運輸政策審議会の答申
「タクシーの需給調整規制廃止に向けて必要となる環境整備方策等について」